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題名:お金と幸福
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.882の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 報告書のNo.43の「お金と情報」では、それらの間にある価値について思索を巡らせ、No.881の「お金と物」では、それらの関連性を探った。さらに、No.882では動物、特にチンパンジーのお金の取り扱いについて調べた。ここでは、「お金と幸福」との観点から、それらの関係を見つめたい。
 一般的に、裕福な家庭、いわゆるお金持ちとしてみなされるような家庭では、お金が沢山あることとなる。ゆえに、その家庭は幸福かというと、そうは問屋がおろさない。ちなみに、漫画等でのお金持ちを調べると、文献1)にもあるように、1位:御坊茶魔(おぼっちゃまくん)、2位:中川圭一巡査(こちら葛飾区亀有公園前派出所)、3位:花輪くん(ちびまる子ちゃん)、4位:骨川スネ夫(ドラえもん)、5位:道明寺司(花より男子)という順位となる。ただし、おぼっちゃまくんの誕生秘話によれば、作者の小林よしのり氏が、「喫茶店でアイデアを練っている時、金持ちの若いカップルが後から店に入ってくると、男が「今度俺のクルーザーに乗せてやるよ」と女に自慢した。この嫌味な金持ち感覚に強い憤りを覚え、そのような上流階級がさらに呆れるような金持ちを創作してやろうと奮起しておぼっちゃまくんが生まれた」1)ことが知られている。このことから、小林氏も、幸福な感情から御坊茶魔を誕生させた訳ではなく、現実に則すれば、お金の持ちすぎ感の反感から生まれたことになる。その反感は、幸福と相容れない要素でもある。
 現実での世界の億万長者を見ると、2018年のアメリカForbes誌のランキングによれば2)、1位:ジェフ・ベゾス氏(Amazon創業者・CEO)、2位:ビル・ゲイツ氏(マイクロソフトの創業者・会長)、3位:ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイの会長兼CEO)となる。しかしながら、どの方も社会的には非常に貢献し、イノベーション(報告書のNo.919も参照)を興した方々でもある。事業の開始が、私欲中心であったとしても、イノベーションによって幸福へと繋がり、そのイノベーションはお金では買えない。
 心理学の研究によれば、収入と幸福感(*)との間の相関係数はr=010-.20であり、あまり相関がなく、年収の高い人の方が低い人よりもやや幸福感が高い傾向がある程度とされる3)。このことから、収入と幸福との相関は直線的ではなく、曲線相関であり、収入が幸福感に及ぼす影響は、収入が高くなるにつれ弱くなるという結果が得られている3)。さらに、自分のために消費したお金は、幸福感との相関がなかったのに対して、自分以外の誰かのために消費したお金は、収入と同程度に自身の幸福感と相関したことが示されている3)。また、お金について頻繁に考えさせられる社会は、そうでない社会に比べて、そこに居住する人々の幸福感を低下させる可能性も示唆されている3)。
 結局のところ、本当の意味での幸福は、お金では買えないことになるのであろう。

*: 幸せな感じがする、ハッピーであるという心理状態だけでなく、我々の生活が自分にとってよいものであること、当人の自己利益の観点から人生がうまくいっている状態を指し、英語ではhappinessではなく、well-beingに相当する4)。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/おぼっちゃまくん (閲覧2018.10.4)
2) http://www.geniuslab.net/2018world/ (閲覧2018.10.4)
3) 佐伯政男, 大石繁宏: 幸福感研究の最前線. 感情心理学研究 21: 92-98, 2014.
4) 江口聡: 幸福についての主観説と客観説, そして幸福の心理学. 哲学の探究 42: 24-42, 2015.



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