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題名:Dr. ハーバード・ウェストは如何にして生ける屍を蘇生させたか?
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1147の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 限りある人生の中で、生ける屍は自分そのものであったことに気づく。なるほど、この世の中にゾンビという概念がはびこる訳である。気がつくと、回りはゾンビだらけである。
その社会的な世相から、ゾンビは、今現実、この世界に存在する。先の報告書で示した光速に走る列車は、結局のところ、ゾンビを見出す鏡でもあった。列車には乗りたくはないと思えども、人生は何らかの路線によって運ばれ、やがて生ける屍として日々を過ごし、目の前の鏡には奇妙な自分が映る。その姿は、まさしく生ける屍に相違ない。だが、しかし、生きる屍は、当たり前であるが、生きてはいないのだ。それはもはや人生ではない。人死に相当する。「肉」はいらない。欲しいのは、「輝き」である。どんなに「肉」を欲しても、それでもって、自分自身の「輝き」としての栄養には至らない。そこで、Dr.ハーバード・ウェストに嘆願するのだ。「生ける屍である自分を蘇生させてくれ」と。
 Dr. ハーバード・ウェストは、アメリカ合衆国の怪奇小説・幻想小説の先駆者でもあるハワード・フィリップス・ラヴクラフト(通称:H・P・ラブクラフト)によって創造された。ミスカトニック大学医学部に籍を置くDr. ハーバード・ウェストの研究目的は、「死の本質、そして人為的に死を克服する可能性について」である1)。その目的の下で、数々の実験を介して、彼は蘇生液を開発する。図でいえば、注射器内にある輝くばかりの緑の液体である。それは、生命の化学的かつ物理的な作用をある程度まで回復させる霊液である1)。Dr. ハーバード・ウェストの見解では、その霊液を屍に注射すると、屍は生き還る。生ける屍である自分にその液を注射すると、どうなるのであろうか。自分が再度蘇生して、はたして何らかの「輝き」を手に入れるのか。
 ただし、である。正常な精神の特性を回復させるには、屍がまさしくきわめて新鮮なものでなければならない1)。もしかして、すでに自分は、生ける屍として、はたまた、ゾンビとして、もはや十二分に時間を経過してしまったかもしれない。なんせ、光速にも似た速度がある列車に乗っていたから、その速度による時空の歪みは尋常ではない。部分的もしくは不完全な蘇生の結果は、まったくの失敗よりもおぞましいことにもなりかねない1)。

図 Dr. ハーバード・ウェスト2)

 結果は? 自分は蘇生できなかった。Dr. ハーバード・ウェストといえども、今回の実験は失敗に終わった。
 次は、スチュアート・ゴードン監督にでも頼んでみるか。そうして、映画「ZOMBIO/死霊のしたたり」を再び見る。ふと調べると、スチュアート・ゴードン監督は、性と暴力の本質を暴き出す反骨のホラー作家らしい3)。さらに、「ZOMBIO/死霊のしたたり」は、ほとんど変態の領域にまで達してしまった映画とされる3)。生ける屍が何らかの「輝き」を得るには、やはり完全変態(報告書のNo.1113も参照)しないと難しいのか。

1) ラブクラフト, HP: 死体蘇生者ハーバート・ウェスト, ラヴクラフト全集 5. 東京創元社. 1987.
2) http://www.fanpop.com/clubs/re-animator-movies/images/10539484/title/herbert-west-fanart (閲覧2019.4.18)
3) http://angeleyes.dee.cc/stuart_gordon/stuart_gordon.html (閲覧2019.4.18)



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