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題名:肌の質感に対する人類史的アプローチの概観
報告者:ナンカイン

 ヒトの体表には毛が少ない。時には毛の多いヒトもいるも、動物と比較すると、あまりにも少ないのがヒトの体毛である。その体毛がなくなった理由として、いくつかの仮説があげられている。それは、大きく分けて4つあり、一つは汗腺体温調節説、一つは性淘汰説、一つはネオテニー説、もう一つはアクア説である1), 2)。汗腺体温調整説は、ヒトは体毛を減らして、汗腺を発達させ、直射日光下でも自由に歩き回れるようになったとする説である1)。性淘汰説は、チャールズ・ダーウィンに基づくもので、体毛が薄い方がセックスアピール上有利に働いたとする説である1)。ネオテニー説は、サルの胎児化したのがヒトであるとして、それにより体毛が欠如したとする説である2)。そして、アクア説は、ヒトが進化の途上で一時的に水中に適応した際に体毛が短くなったとする説である1)。アクア説はあまりにも突拍子もない仮説であることから、学会では認められていないが1)、この中でも現在は、汗腺体温調節説が最も有力視されている。その根拠として、ヒトは他の動物には見られないほど温度に敏感な脳を守る必要があり、そのために被毛を失ったものの、その代わりとして汗腺の一種で全身に分布しているエクリン腺を獲得したことがすでに判明している3)。その年代は、およそ100万年から300万年前とされ3)、現生人類の最も近い共通女系祖先、所謂ミトコンドリア・イブがアフリカから進出した年代が、今から約16±4万年前以後とされることから4)、当時の人類はすでに体毛を失っていたことも分かる。ペンシルベニア州立大学の人類学者であるNina G. Jablonski博士によれば、160万年前の初期ホモ属が現れたころには、すでに無毛化が進んでいたと考えられている5)。
 一方、無毛化が進み、体毛がなくなったことで露出したのが、肌である。そのため、肌の状態は衣服を纏うのと同じくらいに、人は重要な認識を示す。以前の報告書のNo.405にて、ヒトが人となりしその時に、パンツから目覚めたとして、文化的な考察を深めたが、あながちウソではないのであろう、と思える。ただし、パンツの形状以上に、肌の質感には人はこだわりを隠せない。
 肌の質感に関しては、単純に言えば、くすんだ、かつ、しわの多い肌は、その人を老けて不健康そうにみせ、あかるい、かつ、つるつるの肌は、その人を若くて健康そうにみせる。診せるか、魅せる、の瀬戸際が、まさに肌の表面に質感となって、そこに現れる。高級な衣服を身にまとっても、肌の質感が低級であれば、いくらパンツの形状にこだわったとしても、その魅力を半減させる。そのため、日頃からの肌のお手入れは、無視することができない。それは、女性だけでなく、男性も、その他の性別の方も同じであるに違いない。さらには、人類史においても重要な項目になろう。ただし、ヒトとして年齢にはかなわない。時を経るとともに、生物的に衰えるのは致し方ない。そのため、それを少しでも防ぐための肌の質感へのアプローチの一つとして、様々な化粧品の開発方法にも力が入れられている6)。そして、そこでは、画像情報を駆使して、肌の質感を探るべく、素肌らしさや年齢認知、光沢などの研究がなされている6)。
 
1) https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10151873770 (閲覧2019.2.1)
2) https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1127495366 (閲覧2019.2.1)
3) ステン, K: 毛の人類史 なぜ人には毛が必要なのか. 太田出版. 2017.
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/ミトコンドリア・イブ (閲覧2019.2.1)
5) ジャブロンスキー, NG: なぜヒトだけ無毛になったのか. 日経サイエンス 194: 146-153, 2013.
6) 五十嵐崇訓: 肌の質感をコントロールする化粧品の開発. 光学 43: 318-324, 2014.



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