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題名:毛ガニの生態 -そのⅢ-
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.854の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて毛ガニの成長について調べた。ここでは、毛ガニの配偶行動に関して調べたい。
 報告書のNo.853でも示したように、毛ガニは資源管理対策がなされ、漁獲規制が進められている。1931年頃は、肥料としてしか毛ガニが利用されなかったが、1934年にカニ食として毛ガニ缶詰が販売されて以来、徐々に毛ガニの需要が高まった1)。現在でも、北海道かにの郷土料理の一つとして「毛がにてっぽう汁」の缶詰などがあるが、やはり毛ガニと聞くと、缶詰ですら非常に魅惑的に映る。さらに、それが繊細かつ濃厚な毛ガニの味わいを楽しめる贅沢なスープとくれば、グルメとしても求めてやまない2)。それゆえに、毛ガニも乱獲されやすかったのであろう。しかしながら、現在でも毛ガニの繁殖生態などの知見も少なく3), 4)、このまま乱獲が進めば、毛ガニが採れなくなることは間違いない。そこで、生殖機構を解明することが、今後の毛ガニ資源を守るためにも重要な課題となる3), 4)。
 カニ類には、2種類の交尾タイプがある。一つは、甲の硬い雄と脱皮直後の甲の軟らかい雌とのタイプ、もう一つは、甲の硬い雄と脱皮直後でない時期の雌とのタイプである3), 4)。毛ガニは前者のタイプとなる。そして、毛ガニの配偶行動には5つの段階がある。①定位行動、②交尾前ガード行動、③雌の脱皮補助行動、④交尾行動、⑤交尾後ガード行動、である3), 4)。そのスキームを図に示す。図のAが①、C・Eが②、Dが③、Fが④、Gが⑤に相当する。ちなみに、行動に要する時間は、①が30秒ほど、④は18~196分と幅広い3)。
 そこで、どのようにして雄が雌を選ぶか、いわゆる求愛しているかであるが、ワタリガニ科と異なって、毛ガ

図 毛ガニの配偶行動のスキーム4)

ニは雄によるディスプレイ行動はないとされる3)。そのため、毛ガニでは脱皮直前・直後という限られた期間に、雌が性フェロモンを放出し、雄を誘引させていることが指摘されている4)。また、性フェロモンを鍵刺激として一連の連鎖行動に基づいて、この配偶行動がなされてると推測されている4)。

1) 阿部晃治: ケガニの脱皮回数と成長について. BJSSF 48: 157-163, 1982.
2) https://item.rakuten.co.jp/kissui/ht01740/ (閲覧2018.7.9)
3) 佐々木潤: ケガニ Erimacrus isenbeckii (BRANDT)の配偶行動(予報). 北日本底魚部会報 24: 41-54, 1991.
4) 佐々木潤: ケガニの性フェロモンと配偶行動. 化学と生物 32: 322-325, 1994.

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