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題名:精霊インデュワニデュワがもたらす神話の伝承の偉大さ
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.711の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて映画館と先史時代のラスコーの壁画が描かれた時代との類似点について探り、人類の事始めを描いた。ここでは、2万年前とされるラスコーの壁画よりも遡ること、4000年前の2万4000年と推定されているオーストラリアのクーナルダ洞窟において描かれている精霊インデュワニデュワの存在を考察するとともに、それを祖とするオーストラリアの先住民であるアボリジニの魂に迫りたい。
 オーストラリアには今から6万年もの昔に、とある民族がヨーロッパ大陸から移住したとされる。それが、アボリジニの先祖に繋がる。その先祖たちが到着したのが、オーストラリアの南海岸のナラボー平原と呼ばれるところであり、そこの洞窟の一つにクーナルダ洞窟がある1)。そして、そこにはラスコーの洞窟と同じく、先史時代の人類の最古の芸術の痕跡が残されている。その痕跡の一つで、かつ、重要な壁画が、精霊インデュワニデュワである(図)。かつてなら宇宙人とも揶揄されそうな図ではある。しかしながら、宇宙人はいなかったと確証すれば、これは間違いなく人類、アボリジニの祖先が描いたものであることは、疑いようがない。
 精霊インデュワニデュワは、アボリジニの部族の一つであるガグジュ族の生命の源であり、そのガグジュ族の聖地において、動物や人間を創造し、大地を守り、人々に知恵を与えたとされる1)。このことから、壁画であっても、精霊インデュワニデュワは明らかに神的な存在であることは間違いない。さらに、インデュワニデュワは壁画に描かれた伝承と

図 精霊インデュワニデュワ1)

して、「石に化身し、いつでも会える」とされ、ガグジュ族の大いなる信仰の対象であったことも伺われる。とすれば、それを産み出したガグジュ族の祖先には、明らかに抽象的な思考と哲学的な思索を、当時すでに備えていたことも類推できる1)。壁画は、絵であり芸術である。しかしながら、そこに意味を与えるのは、まさしく宗教に他ならない。ここに、芸術と宗教の接点が垣間見られる。さらに、大事なのは、「石に化身し、いつでも会える」ことであり、かつての人類は、大地と人間の魂は一体であることも伝承されていたことが強く示唆される。これは、間違いなく現代人が進化の際に捨ててしまった精神に関する重要な痕跡であり、それは、別世界への旅立ちを意味する精神的なイメージでもあった1)。
 一方、No.711で示した映画にしろ、昨今のSNSにしろ、その背景に確固たる物語がないと、人はそこには感動を見出さない。そのため、インスタ(インスタグラム)映えで重要なのは、画像がきれいだからという理由だけではないはずである。その画像の背後にある物語がやはり必要となる。現代の神話の伝承は、インスタ映えとなるのかもしれないが、精霊インデュワニデュワは、それをどのように感じているのであろうか? 例え、電子での世界で一体となれたとしても、本来の大地から(大力:ダイチカラ)は目覚めないのかもしれない。

1) ジョハンソン, DC., ジョハンソン, LC., エドガー, B.: 人類の祖先を求めて. 別冊日経サイエンス 117: 117-130, 1996.



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