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題名:歪んだ2次元は、3次元の意識となりうるのか?
報告者:ダレナン

 現在の我々の住む世界は3次元である。縦と横と高さと3つの軸があるので、3次元となる。ゆえに、3次元空間となる。これに時間軸を加えて4次元とすることもある。しかしながら、時間は宇宙のビックバン以降、時間の矢でもって一方向にしか流れなくなったために、空間の次元とはやや異なるかもしれない。物理・数学的には、時間はtの導入により式としてまとめられるが、感覚的には3次元空間+1次元(的)時間が本来として正しいのかもしれない。実に、時間とは不思議な存在でもある(No.281も参照)。アイザック・ニュートン卿は空間と時間とを絶対的なものとして体系化し、アルベルト・アインシュタインは時間と空間を相対的なものとして体系化し、時間と空間の関係性(時空)を説いた。しかしながら、今でも時間の謎は依然として解けていない1)。
 さらに、1次元(的)時間を離れ、今いる3次元空間を覗いてみると、3次元空間は当たり前のように脳内で知覚している。しかしながら、これも眼球から網膜へと入力される前に次元がひとつ減ることが明らかである。網膜は眼球から入ってきた光を投影しているスクリーンの様なものであり、ここで3次元から2次元へと次元が減少する。左右の目の感覚は大人にして約7cmほどであり、この差が立体を生み出すきっかけとして役立っていることは推測されるも、片目で見ても目の前の空間は立体的(3次元)に見える。このことから、目の前の空間を3次元として感じているのは、3次元から2次元へと次元を落とされた網膜以後の神経処理によって成されていることが明らかである。
 視覚情報処理に関する計算理論として古典的な名著であるデビッド・マー氏による「ビジョン」2)によれば、網膜以後の画像の複号化の過程は、①立体視、②運動方向の選択性、③仮現運動からの構造の復元、④光流動からの奥行きの推定、⑤表面輪郭からの表面方向の推定、⑥表面テクスチャーからの表面方向の推定、⑦陰影からの形状復元、⑧測光立体視法、⑨反射率に対する近似としての色と明るさの決定、などが挙げられている。さらに、視覚情報処理の枠組みを提供する表現の段階として、①原始スケッチ: 2次元画像の特性を明らかにする、②2.5次元スケッチ: 奥行きと方向、輪郭を表現する、③3次元モデル: 物体中心の座標系となり、立体表現素と大きさの表現素がモジュール的・階層的に組織化される、の3つを挙げている。ここで、「ビジョン」で示されているネッカーの錯視(図)を取り上げると、図(a)は、図(b)の様にも、図(c)の様にも解釈できる。しかしながら、これを逆から解釈すると図(b)も図(c) もただの  

図 ネッカーの錯視2)

線で構成された2次元図形でしかない。それにも関わらずこれが3次元として脳内で意識的に浮かび上がる。それ自体に、2次元空間を歪んで知覚させるヒトの脳内の3次元空間の特質が考えられる。見方によっては、これはマー氏の画像複号や3次元表現と逆からのなぞりともなる。ゆえに、歪んだ2次元は、ヒトにすれば3次元の意識ともなりうるのかもしれない。

1) ディビス, ポール: 時間について. 早川書房. 1997.
2) マー, デビット: ビジョン. 産業図書. 1987.

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